[掲載]2007年7月22日
■最高傑作は「生涯そのもの」
落水荘、帝国ホテル、グッゲンハイム美術館……。数々の名作で知られ、日本にも作品の残る米国人建築家の評伝である。建築家には作品を創作した人生と、実際に生きた等身大の人生がある。その双方に目を配り、少年時代から最期までを一気に読ませる。
それにしても、これほどまでに型破りで豪胆不敵、かつ魅力的な人物も珍しい。奔放に恋に落ち、支払い不履行は常習犯、度を超した衝動買いを反省することもない。経済的にも倫理的にも問題だらけ、言動には常に矛盾が見え隠れする。いっぽうで3度も住居を焼失、恋人と彼女の子供たちを使用人に惨殺されるなど、不運な出来事に遭うことも稀(まれ)ではなかった。しかし挫折のたびに、見事に人生を立て直した。
建築家は巨匠の名に安住することはなく、作風は晩年まで変貌(へんぼう)し続けた。完結や完璧(かんぺき)を求めず、あえて異端であり続けようとする姿勢は、日々の暮らしも同様であった。
建築家の最高傑作は、芝居がかった生涯そのものであった。その生き様と死に様に、誰もが驚き、笑い、感動し、呆(あき)れかえり、元気をもらう。建築に関心のない読者も、人物像に魅了されるはずだ。
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三輪直美訳
著者:エイダ・ルイーズ・ハクスタブル・三輪 直美
出版社:TOTO出版 価格:¥ 2,100