[掲載]2007年7月29日
■いまや「漫画迷(オタク)」も登場、文化的岐路に
中国最大の漫画見本市「中国国際動漫産業博覧会」を視察した時、コスプレの最優秀チームを決める催しが、会場で人気を集めているのに驚いた。「動漫」とはアニメと漫画の総称である。漫画やアニメ、さらにはオタク文化までもが、国家主導で振興されている。だが、これまで中華人民共和国建国以降の「中国漫画」について、詳細に述べた書籍や研究は皆無であったという。本書は、その穴を埋める大切な仕事だ。
そもそも中国で初めて「漫画」という言葉が用いられたのは1923年。日本に留学し、竹久夢二の作風に影響を受けた豊子ガイ(ほうしがい)が帰国したのち、描き始めた風刺画を漫画と呼んだのが初見だという。
著者は、中国の漫画家たちが「政治性の考慮」と「表現の大衆化」という二つの法則を守ってきたと述べる。たとえば清朝末期の「反洋教漫画」や戦争期の「抗日漫画」など、49年までは風刺に重きを置きながらも列強の侵略や官僚統治者に対する批判が主だった。50年代には反米を訴える「国際風刺漫画」や新中国を賛美する「謳歌(おうか)漫画」が流布した。文化大革命の時代には「造反漫画」、76年以降は「四人組批判漫画」、80年代には開放改革を求める「傷痕漫画」が出まわる。
風刺漫画の変遷と、中国の人たちや国家が直面した辛苦と闘いの軌跡は、おのずと重なりあう。中国美術家協会漫画芸術委員会も「漫画は一種の風刺性、ユーモア性を備えている絵画である。……それは、政治闘争と思想闘争の一種の道具である」と定義する。中国漫画にかかわる人たちは、世にうごめく諸悪を暴露し、自由を獲得するために闘いを続けてきたのだ。
いっぽう近年では、中国の子供たちも日本産のストーリー漫画に夢中だ。若い世代には「漫画迷」、すなわちオタクも増えている。著者は、従来型の中国漫画への関心が薄れている現状に懸念を示す。闘争の道具である風刺漫画の伝統と、ストーリー漫画という表現手段が、今後いかに融合し、新たな創造につながるのか。中国における漫画文化は岐路にあるようだ。
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とう・や 67年、中国生まれ。中国現代芸術を紹介。ユーラシアンアート龍代表取締役。
著者:陶 冶
出版社:白帝社 価格:¥ 2,100
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