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書評

モーティマー夫人の不機嫌な世界地誌 [編]トッド・プリュザン

[掲載]2007年08月19日
[評者]酒井啓子(東京外国語大学教授・中東現代政治)

■独断と偏見のトンデモ解説

 150年前にイギリスの有名な作家が書いた世界の国ぐに解説本を、なぜ今、ニューヨークの編集者が抄録して出版したかというと、まずそのトンデモな世界観にあきれ、笑う(この作家はほとんど海外に出たことがない!)と同時に、でもこんなトンデモ世界観は現在も先進国の政治家によく見られ、外国への失言暴言は日常茶飯じゃないか、と言いたかったからだ。

 イングランドが一番、と信じて疑わないモーティマー夫人が他国をこき下ろす際、最も嫌うのは、偶像崇拝、「まちがった宗教」(仏教、イスラム教はもちろん、カトリックも)、そして飲酒。なんか、タリバンが読んだら、すごく共感しそうだ。続いて、不誠実、醜さ、残酷が欠点とされる。

 全体にトンデモだらけなのに、ときどき、はっとする記述がある。アフガニスタンでイギリス人が殺されることに対して、「アフガン人を責めることはできません……彼らは自分の国を守っただけなのです」。

 また黒人については、「ただ肌の色が黒いというだけ」で差別されるのは、「まちがったことだと思いませんか?」。

 笑えて、やがて(今の世界が)情けなくなる本だ。

    ◇

 三辺律子訳

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