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書評

暮らしの哲学 [著]池田晶子

[掲載]2007年08月19日
[評者]杉山正樹(文芸評論家)

■話し言葉で〈生〉の本質語る

 「哲学」はムズカしい。あなたもそうおもい込んでいませんか? しかし、池田晶子さんは、専門用語を使わず、日常の話し言葉で哲学の本質を語りつづけたのでした。

 この世に生きるとは?

 自分とは何者か?

 世界をどう理解するか?

 癌(がん)を告知されたら?

 その他、生まれてから死ぬまで(いや、死後まで)人間が直面する、あまたの重要な出来事を、春夏秋冬の季節の流れにそって書きとめたのでした。

 さっきから過去形で述べているのは、ほかでもなくこの本が今年の二月、まだ40代の半ばで急逝した著者の遺作だからです。

 惜しいひとを亡くした。つくづくそうおもいます。「哲学」とは「考える」こと。現象の向こうに本質をとらえること。そんな誰にでもわかる「哲学エッセイ」は、さらに深く豊かな思索が展開されたはず。著者自身、年をとるという醍醐味(だいごみ)が楽しみだと書いているし、現に新しい春を迎えた最終回にその萌芽(ほうが)が見られます。

 詩人の伊東静雄は、蝉(せみ)の声を聴いて「一種前世(ぜんしょう)のおもひ」を抱きましたが、日常の時間から解放される夏こそ「哲学=考える」にふさわしく、本書は多くのヒントを与えてくれます。

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