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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]赤澤史朗> 記事 書評 現代世界とイギリス帝国 [編著]木畑洋一[掲載]2007年08月26日 ■本国と支配地域の現代政治史を描く イギリス帝国史研究は依然として盛んである。80年代に出現したその研究は、それまでの一国主義的な歴史観を越えるものとして生まれた。しかし世界最大だったイギリス帝国が、脱植民地化によって過去のものとなった今、その研究にはどんな現代的意味があるのか。本書はこの問いに、イギリス本国やその支配した地域の現代政治史を描くことで、正面から答えようとしたものである。 単純化すれば、それには二種類の答えがあるといえよう。一つは、帝国支配の傷跡が脱植民地化後も生きているという、帝国の負の遺産論といった理解である。今日のジンバブエのムガベ政権がどんなに問題のある独裁政権であろうと、ジンバブエがかつてのアパルトヘイトで有名なローデシア共和国から独立した国であり、独立に当たって農村部で少数の白人大農場主の支配が継続したことが、現在の問題の原因の一つであるのは間違いない。 もう一つはかつてのイギリス帝国の支配地域や支配機構が、帝国の解体に伴い民主化されて、以前と別の役割を担うようになっていったことに、21世紀の展望を見いだそうとする考え方である。例えば以前の香港では、イギリス香港政庁側も中国側も、民主的な住民参加の制度の採用には消極的であった。ところが90年代になってイギリスの香港政庁は住民参加に積極的となり、香港での民主化の動きは97年の中国への返還後も持続し、中国全体の民主化を支えているという。 本書では、かつての支配地域の今日のありかたは、こうした相反する二つの要素が結びついている点にあると考えている。例えばイギリス本国では、60年代から有色人種の流入に歯止めをかけつつ国内での民族差別を禁止しようとしているが、そこには民族差別とその解消の双方の動きが見られる。言いかえるとそこでは、克服すべき過去と求められる未来の試みの両方が、一体となって存在しているのである。現代イギリスの抱える困難も希望も、かつての帝国支配と無関係ではないことを示した一書といえよう。 ◇ きばた・よういち 46年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。
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