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書評

女王陛下の影法師 [著]君塚直隆

[掲載]2007年09月02日
[評者]奈良岡聰智(京都大学准教授)

■身近で支える秘書官の実像

 「君臨すれども統治せず」。英国の立憲君主制の原則として、よく知られる言葉である。しかし、国王はお飾りではなく、政治や社会の安定のため大きな役割を果たしてきた。その活動を身近で支えたのが、「影法師」こと国王秘書官であった。筆者は、19世紀から現在までの彼らの役割を、国王の日記など王室所蔵の史料を使って丹念に考察している。

 例えば、首相の任命について、英国では議院内閣制が定着してきた18世紀以降も、第2次大戦後に至るまで、しばしば国王自らが調整を図ってきた。この際の国王、秘書官、政治家の息の詰まるやりとりが、鮮やかに描かれている。

 秘書官とメディアの関係についての分析も、興味深い。エドワード8世が「王冠を賭けた恋」で退位した背景には秘書官との確執があり、逆にダイアナ問題やチャールズ皇太子の再婚問題に王室がかろうじて対処できたのは、シナリオ作りなど秘書官のサポートによるところが大きいという。

 有能な「影法師」たる側近が不足しているようにも見える現皇室のあり方を考える上でも、本書の分析は示唆に富む。日本史に関心がある人にも、ぜひ一読をお勧めしたい。

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