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書評

外国人犯罪者 [著]岩男壽美子

[掲載]2007年09月09日
[評者]小林良彰(慶應大学教授・政治学)

■受刑者らを調査、浮かび上がる実像

 多文化共生といえば聞こえがよいが、その実態は和気藹々(あいあい)とした「きれいごと」の世界ばかりではない。現在、東京の留置場に収容されている3割が外国人であるというのが、悲しい現実である。

 それでは、彼らはなぜ、犯罪者となったのか?そして、罪を犯したことをどう考えているのか?この問題を考えなければ、必要以上に外国人を拒むことになり、多文化共生は実現しない。

 著者は、長年、異文化コミュニケーションを研究し、治安維持にもかかわった。本書は、全国の刑務所の受刑者に大規模な調査を行い、日本人と外国人、男性と女性、犯罪者と一般人を比較した。世界でも類を見ない本である。

 まず、外国人犯罪者の来日目的をみると、「金を儲(もう)ける」が、最も多い。正規旅券で入国した者もブローカーに数百万円を支払っている場合が多く、滞在期限を過ぎても、その借金を返せないで不法滞在を続けたり、犯罪に手を染めるケースがある。

 そして、外国人受刑者に日本で自分と同じ罪を犯した人が捕まる確率を尋ねると、男子の半数、女子の6割が25%以下と低く考えていた。その背景には、本国で同じ罪を犯しても、捕まる確率が低いと思っていることがある。

 また犯罪を起こしたことについて、外国人受刑者は日本人よりも貧困や教育など社会的要因を挙げる者が多く、被害者の痛みに対する共感も薄い。特に、中国人受刑者の6割が「被害者のことを考えたことがない」と答えている。

 さらに、刑務所での生活について、中国人は食事の量、欧米人は自由時間、中南米出身者は家族との連絡が思う通りに行かないことに、不満を持っており、男子の8割が本国での服役を望んでいる。

 こうした調査結果に基づいて、著者は警察が逮捕した不法滞在者の速やかな強制退去、入国の事前審査中心から入国後の的確な事後チェックへの移行、受刑者の本国への移送推進、検挙率の向上などを提言としてあげる。多文化共生と安心安全な暮らしの両立を考える上で、本書は豊富で貴重なデータを提供する。

    ◇

 いわお・すみこ 35年生まれ。慶応大名誉教授。著書に『おんなの知恵』など。

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