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書評

ピースメイカーズ―1919年パリ講和会議の群像 [著]マーガレット・マクミラン

[掲載]2007年09月23日
[評者]奈良岡聰智(京都大学准教授)

■国際秩序形成の舞台を活写

 20世紀はいつ始まったのだろうか。自由主義、民主主義、国際主義といった、現代国際政治の有力な指導原理が決定的な意味を持って浮上したという意味では、1919年に第1次大戦を終結させたパリ講和会議こそが、その出発点と位置づけられる。

 同会議を主導したのは、米国のウィルソン大統領、英国のロイド・ジョージ首相、仏国のクレマンソー首相。彼ら3巨頭が「新外交」の理念と旧来の秘密外交や国益の間で揺れながら、大戦後の新しい国際秩序を作り出そうと苦闘する様子が、活写されている。

 筆者は、小国や非西洋の動向にも丹念に目配りしている。大国の思惑によって、民族自決原理が恣意(しい)的に国境策定に適用された東欧。アラブ人とユダヤ人に対する英国の矛盾した約束が、今なお残るパレスチナ問題の悲劇を生んだ中東。さらに、大戦を機に存在感を増した日本や中国の動きについても、比較的よく描かれている。日本は「自国の目標にこだわり、他のことには一切関心がなかった」という指摘は、現代の日本外交への警鐘として読むこともできよう。

 原著にあった文献一覧が省かれているのは惜しまれるが、和訳は読みやすい。

    ◇

 稲村美貴子訳

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