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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]巽孝之> 記事 書評 エルヴィス、最後のアメリカン・ヒーロー [著]前田絢子[掲載]2007年09月23日 ■米国の夢と悪夢を巧妙に ロックの帝王エルヴィス・プレスリーが42歳で世を去ってから、今年の8月で30年。ゆかりの地・テネシー州メンフィスでは追悼企画が行われ、いまもアメリカ合衆国にはエルヴィス生存説を信じる向きがあるという。空前絶後のポップスター神話は、どのように構築されたのか? エルヴィス研究の第一人者が送る最新刊は、彼の背後より、現代アメリカの夢と悪夢を巧妙にあぶりだす。 もちろん1954年、黒人音楽を崇拝してやまない10代のエルヴィスが試行錯誤の末にロックを産み落としてしまう場面は、何度読み返してもドラマティックだ。しかしそれ以上に、1960年代、エルヴィスの音楽がいかに人種問題を反映し、いかに音楽によって黒人牧師マーティン・ルーサー・キングと応答したか、彼のコンサートがいかにゴスペルの宗教的儀式を彷彿(ほうふつ)とさせるものであったかを分析する筆致が迫力十分。 ビートルズを反米とみなし、麻薬取り締まり強化をニクソン大統領に直訴する愛国者エルヴィス自身が、薬物の過剰摂取に陥っていく晩年は皮肉である。本書はさらにフェミニズム的解釈においても異色の仕掛けを秘めているのだが、それは読んでのお楽しみ。
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