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映画篇 [著]金城一紀

[掲載]2007年9月23日

  • [評者]重松清(作家)

■映画への深い愛と信頼に満ちて

 五つの小説が収められた短編集を読むことは、すなわち五つのラストシーンに出会うということである。小説をその点のみで語ってしまうことの乱暴さは承知しているが、しかし、本書で描かれた五つのみごとなラストシーンは、おそらく――僕自身がそうだったように、読者の胸にいつまでもとどまりつづけるに違いない。

 題名どおり映画をキモにした作品を揃(そろ)えた本書、各編のタイトルも「太陽がいっぱい」「ドラゴン怒りの鉄拳」「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス」「ペイルライダー」「愛の泉」と映画からとられている(そして全編に登場する最もたいせつな映画があるのだが……それをここで明かすようなヤボなことはしないでおこう)。

 共通しているのは、それぞれの映画作品へのオマージュと、なにより「映画を観(み)る」という行為への深い愛と信頼だ。暗闇の中に浮かび上がる映画は、不器用な友情で結ばれた少年たちや、夫を自殺で亡くした妻や、おばあちゃんのために映画の上映会を開こうとする少年の心をとらえて放さない。そして、映画が彼らに力を与える。幸せだった記憶をよみがえらせ、あるいは過去の呪縛を断ち切らせて、前へと進ませる。

 金城一紀さんはデビュー以来、繰り返し、いや一貫して、意志の力を描いてきた作家だと僕は思っている。本書でもそれは変わらない。五つの物語はラストシーンにたどりついて確かに閉じられる。しかし、そこには「終わり」と同時に「始まり」の力強さも内包されている。ウェルメイドな短編の余韻を超えて、主人公一人ひとりの意志が、きれいに閉じられたはずの物語をさらにもう一歩先へと進めるのだ。もちろん、その「もう一歩先の物語」は言葉では描かれていない。だからこそ、読者は読了したばかりの本書について、同じ立場の読み手と語りたくなるはずだ。話は尽きないだろう――〈その日見た映画の感想などを夜が更けるまで語り合った〉「太陽がいっぱい」の二人の少年のように。

    ◇

 かねしろ・かずき 作家。68年生まれ。著書に『GO』『フライ,ダディ,フライ』など。

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映画篇

著者:金城 一紀

出版社:集英社   価格:¥ 1,470

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GO (講談社文庫)

著者:金城 一紀

出版社:講談社   価格:¥ 470

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