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書評

アリスの服が着たい [著]坂井妙子

[掲載]2007年09月23日
[評者]久田恵(ノンフィクション作家)

■キャラクター子供服から見える世界

 アリスが大好き。むろん、ルイス・キャロル原作の「不思議の国」や「鏡の国」に出てくるあのアリス。

 ウエーブのかかった長い髪。小さな襟とちょうちん袖のワンピース。ふんわり広がったスカートは裾(すそ)上げタックが3段。胸当て付きエプロンの生地は、洗濯のきくポプリンかしら。靴は、私も子どもの頃はいていたストラップシューズね。あの靴でウサギを追いかけてどこまでも駆けていく。おお、永遠の少女、アリスよ。

 でも、この挿画家テニエルの描くアリスのファッションが、百数十年も前のイギリスの保守的なミドルクラスの少女の服だなんてことまで、考えたことはなかった。

 しかもアリスの三角ポケット付きのエプロンや横縞(よこじま)のストッキングが、当時、ロンドンで大流行していたなんて。それやこれやを知ると、いっそう、アリスのイメージがいきいきとしてくる。

 本書は、この『不思議の国のアリス』をはじめとする、ヴィクトリア朝後期の児童文学と「子供服」の誕生の関連を論じたもので、読んでいると、えっ、そうなの? という驚きが続出する。

 たとえば、この時代の有名な絵本作家、これまた私の大好きなケイト・グリーナウェイが描く少女たちのドレスやモブキャップは、当時から言えば「おばあちゃまの時代のファッション」で、人々の「幼年時代」の郷愁をかきたてて人気を呼んだのだとか。

 「マザーグース」に出てくる「ハバードおばさん」ファッションは、子ども仮装舞踏会の定番だったのよ、とか。

 この時代、産業革命で急激に社会が変容したイギリスでは、都市部で近代的な消費生活が始まって、子ども中心の核家族が形成されたそうな。

 それで「子ども時代特有の文化」が生まれ、「子供服」というファッション領域をついに世界に登場させたらしい。

 なるほど、なるほど。

 ヴィクトリア朝時代のキャラクター子供服という意表をつく切り口から見える世界は、なかなかにスリリング。イラストもいっぱいで、わが本棚におさめたい一冊だ。

    ◇

 さかい・たえこ 日本女子大人間社会学部准教授。『おとぎの国のモード』など。

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