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書評

都道府県改革論 政府規模の実証研究 [著]野田遊

[掲載]2007年09月30日
[評者]小林良彰(慶應大学教授・政治学)

■道州制導入の論議を実証的に分析

 福田新内閣で道州制導入に積極的な増田総務相が再任されたことで、道州制導入に向けての議論が今後も継続していくのではないかと思われる。

 この道州制については、「規模の経済性」による行政コスト削減や分権化を期待する賛成論と、行政と住民の距離が開いてしまうことや道州内の地域格差が生じることを案じる反対論が対立している。本書は、都道府県を単位とするデータ分析により、そうした論争に客観的な知見を与えようとするものである。

 まず、著者は県内市町村数が多いほど市町村間の水平的連携がなされるようになり、人口1人あたりの府県の歳出が少なくなる、という驚くべき事実を明らかにする。また、市町村合併によっては府県の歳出が抑制されないことを提示する。こうしたことから、都道府県の自主的な合併を前提とする道州制では、非効率的財政が温存される可能性があると警鐘を鳴らす。

 さらに、県内市町村の歳出に比べて上位政府である県の歳出が大きいほど非効率な財政歳出が行われるという分析結果を明らかにする。そして、各市町村間の財政格差は小さい方が効率的であることも示す。換言すれば、道州制を導入する際には、道州政府の歳出を抑制する一方で、道州内市町村の格差是正を誘導する施策が望ましいことになる。

 そして、都道府県から道州へ規模が拡大しても、市町村では対応できない行政に限って道州政府が担い、住民の期待に応えられる対応能力を示せば住民の参加意識(投票率など)は低下しないことを分析結果から示唆する。

 さらに、雇用や定住など人口にかかわる施策は道州単位で統合的に行い、社会資本整備は道州内で中心となる府県に行うことが効果的であることを実証している。

 こうした著者の分析に対しては、都道府県単位の分析から道州など広域行政の効果を類推することはできないのではないかとの意見もあるが、今後の道州制論議に向けて多くの示唆に富む知見を提供するものと評価したい。

    ◇

のだ・ゆう 73年生まれ。三菱UFJリサーチ&コンサルティング勤務。

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