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書評

楽園(上・下) [著]宮部みゆき

[掲載]2007年09月30日
[評者]四ノ原恒憲(編集委員)

■「幸せ」の代償、過酷な地上に

 ベストセラーとなった著者の代表作の一つ『模倣犯』で大活躍した女性フリーライター、前畑滋子が主人公をつとめる。前作の影が全編に落ちてはいるが、全く独立した作品として、その世界に入っていける。

 「死んだ我が子が、不思議な絵を残している」と前畑を訪ねてきた母がいる。まったく見知らぬ夫婦が、娘を殺し、長く自宅床下に埋めていた事件があった。事件発覚が、息子の死のずっと後なのに、絵の中にその遺体の状況が描かれていたという。「息子は超能力者だったのか知りたい」。そんな母の依頼を受けた前畑の調査の中から、様々な重苦しい人生や、さらなる事件があぶり出される。

 それにしても、描かれる人生のなんと辛(つら)いことか。著者は、「楽園」とは「幸せ」のことだという。人々は幸せを求め、必ず、ほんのひとときであれ、己の楽園を見いだす。他から見て、それがいかに奇妙で、危うく、また血にまみれてさえいても。そして、そこに支払った代償が、楽園を過酷な地上にひきずり戻すのだ、と。

 確かに、今の時代、幸せとは、何と難しいことか。読後の余韻は重いが、その中に柔らかい風も吹く。決してニヒリズムには落ちない、著者の人間観故に。

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