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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]その他> 記事 書評 果ての花火 銀座開化おもかげ草紙 [著]松井今朝子[掲載]2007年10月07日 ■激動の明治初期描く事件帖 『吉原手引草』で直木賞を受賞した著者の、『銀座開化事件帖(ちょう)』につづく第2集。一話完結の形式だからこれだけで充分楽しめる。 明治8年、銀座の煉瓦(れんが)街に住む久保田宗八郎は、もと旗本で宿敵(かたき)をもつ身だが、家主で旧大垣藩主の子・戸田三郎四郎(のち欽堂(きんどう)と号して本邦初の政治小説を戯作(げさく)調で書く)や、原胤昭(たねあき)(もと八丁堀の与力で受刑者の更生に尽力する)、おなじ店子(たなこ)で薩摩出身の市来(いちき)巡査とともに六つの事件を解決する。 どれもみな、徴兵制や言論弾圧、株式会社や神風連(じんぷうれん)の乱など、明治初めの激動期を反映する。といえば何やらこちたき大小説めくがとんでもない。練達の作者は、宗八郎の愛人の比呂や御典医の娘の綾(あや)を配し、人情劇も悲劇も風刺劇もあって、それぞれの趣向がおもしろい。 岡本綺堂の『半七捕物帳』は江戸を懐古して風情があったが、こちらは元祖と異なり、旧旗本を主人公にしながら、過去を想(おも)って感傷的にならず、文明開化した日本の裏面を描く。 基督(キリスト)教に帰依した戸田や原や綾と違って、太政官(だじょうかん)政府の大物になった宿敵を討つため、日々をそれこそ実存的に生きる宗八郎の、西南の役の後を知りたく、続編が待たれてならない。
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