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書評

暴走老人! [著]藤原智美

[掲載]2007年10月14日
[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)

■丸くならない「新老人」を生んだのは

 巷(ちまた)ですでに話題沸騰寸前の本である。『暴走老人!』。作家の藤原智美さんによる、「新タイプの老人」考だ。

 人は歳(とし)とともに成熟し、分別を身につけて丸くなる――そんな常識に反し、どうも最近、不可解な行動で摩擦を起こしたり、暴力的な行動に走る老人が目立つ気がするぞ。そう考えた藤原さんが彼らに与えた呼称が「新老人」。

 若者の暴走をしたり顔で分析した本は多いけど(で、その多くは単なる若者嫌いの暴論だったりするのだが)、若者の凶悪犯罪は統計的にはむしろ減っているのである。ところが、65歳以上の犯罪はこの15年強でじつに5倍!

 ああ、やっぱりな。うちのオトーサンもキレやすいもんなぞと思った読者も多いのではないか。それが売れている理由だと思うのだが、「盛大にやっつけてくれ」と願うおおかたの期待(?)に反し、この本自体は暴走しない。

 税務署で病院で高速道路の料金所で著者が実際に目にした例。あるいは新聞で報じられた高齢者が主役の事件。そんなものを手がかりに、著者の目は「何が彼や彼女をそうさせたか」という背景の分析へと向かうのである。

 ケータイやインターネットの普及は時間の感覚を変容させた。高齢化が進む郊外に象徴されるように、外界と隔てられた住環境は独居老人を精神的にも孤立させる。人と人との関係も、コンビニやファミレスのようにマニュアル化され、透明なルールがそこいらじゅうに張り巡らされている。高齢者を疎外する要素には事欠かないのである。

 若者叩(たた)きには嬉々(きき)として興じても、老人批判がしにくいのは「未来の自分」がそこに重なるからだろう。〈社会の情報化へスムーズに適応できないこと〉が彼らを暴走させるという著者の分析は、情報弱者としての老人を浮き彫りにして説得力に富む。

 だが、この本に登場する新老人の暴走なんかまだカワイイもの、ともいえるのだ。ご近所トラブルより始末が悪いのは「権力を持った旧老人」の暴走である。そちらへの言及がないのはやや不満。迷惑の度合いを考えれば、ね。

    ◇

ふじわら・ともみ 55年生まれ。92年『運転士』で芥川賞。『群体(クラスター)』『モナの瞳』など。

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