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書評

拡大するイスラーム金融 [著]糠谷英輝/イスラム金融入門 [著]吉田悦章

[掲載]2007年10月14日
[評者]山下範久(立命館大学准教授・歴史社会学)

■多元的な市場のひとつとして成長

 最近、経済紙やビジネス誌にイスラーム金融を扱う記事が目につくようになった。原油価格の高騰を背景に、オイルマネーの運用需要が高まっていること。70年代以降つづく趨勢(すうせい)として(そして9・11以降さらに)、ムスリムのイスラーム回帰志向が高まっていること。そしてイスラームが、その教義において利子を禁じていること。こういったことを断片的に聞きかじってはいたものの、率直に言ってイスラーム金融が、実際にどういったものなのかについて評者は無知であったところ、一般向けの概説書が相次いで刊行された。

 利子を禁ずるといっても、事業への投資からの収益や実物の売買から生ずる利ざや、リース料や手数料は問題ない。イスラーム金融の技術的本質は、シャリーア(イスラーム法)上で適格とされた取引を組み合わせることで、利子を回避した金融商品を開発・運用することである。いまやヘッジファンドまである(シャリーア解釈の厳格な国では認められていないが)イスラーム金融商品の多様さには驚かされる。ムスリムにとって宗教的に満足なだけでなく、場合によっては一般金融よりも有利な商品が生まれることもあるのだ。

 これまで経済の観点からのイスラームへの関心といえば、オイルマネーを当て込んだ「バスに乗り遅れるな」式のビジネスチャンスの喧伝(けんでん)か、イスラームに資本主義のオルタナティヴを勝手に投影した左翼オリエンタリズムのいずれかでしかなかったように思われる。

 しかし今日成長しつつあるイスラーム金融は、たとえば同じ市場社会でも日本とアメリカとスウェーデンとがそれぞれ異なる文化や制度に支えられているように、多元的な市場社会のひとつのヴァリエーションと捉(とら)えるべきものだろう。法制度の整備など、乗り越えていくべき課題は多いが、つまるところ、それがグローバル化である。

 とっつきやすさでは『入門』が半歩勝るが、解説の網羅性では『拡大』に軍配。できれば両書の併読をお勧めしたい。

    ◇

▽『拡大――』/ぬかや・ひでき 国際通貨研究所主任研究員 ▽『――入門』/よしだ・えつあき 国際協力銀行調査役。

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