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書評

李方子―一韓国人として悔いなく [著]小田部雄次

[掲載]2007年10月21日
[評者]奈良岡聰智(京都大学准教授)

■宮家から嫁いだ女性の生涯

 1910年の韓国併合に伴い、大韓帝国は日本の植民地となった。皇帝は李王と改称され、やがて最後の皇太子だった李垠(イ・ウン)(り・ぎん)が李王家を継ぐ。本書は、皇族梨本宮家から李垠に嫁ぎ、両国の狭間(はざま)で生きた李方子(イ・バンジャ)(り・まさこ)の生涯を追った評伝である。

 皇族に準じる待遇を受けた李王家は経済的には恵まれていたが、方子が歩んだ道は、苦難に満ちていた。日韓融和のシンボルとして日本政府主導で決められた結婚、日本・朝鮮双方からの猜疑(さいぎ)に満ちた目、毒殺も噂(うわさ)された長男の死。方子が「悲劇の女王」と称されるゆえんである。

 戦後、李王家は廃止され、方子と夫は財産を次々と失い、独立した韓国から入国を拒否されるなど、さらなる困難に直面する。晩年にようやく入国を許された方子は、一韓国人「イ・バンジャ」として福祉事業に余生を捧(ささ)げ、韓国におけるボランティアの先駆者の一人となる。著者は、そこに人間としての美しさを見いだし、彼女が日韓の橋渡しとしての役割を全うしたと評価している。

 彼女の生涯を辿(たど)ることで、この100年の日本と朝鮮半島の関(かか)わりが見えてくる。日韓の将来を考える上でも、一読の価値がある書である。

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