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書評

マンハッタンを歩く [著]ピート・ハミル

[掲載]2007年10月21日
[評者]多賀幹子(フリージャーナリスト)

■「9・11」で故郷を見つめ直す

 著者は新聞記者や作家として、長くマンハッタンで働き暮らす。「運がよければ、たぶんここで死ぬだろう」と言い切る生粋のニューヨーカー。故郷を舞台にした自伝的エッセーには自然に思いがこもる。

 マンハッタンの中でもダウンタウンとよばれる南部を歩いて、ブルックリン橋、バッテリー・パーク、トリニティ教会、タイムズ・スクエアなどの歴史に思いをはせる。人物や建築物などについての無数のエピソードは、控えめながら誇らしげでノスタルジアにあふれている。

 この本を書くきっかけは01年9月11日の世界貿易センタービル崩壊だった。その朝、「落下したガラスと鋼鉄の衝撃で音の世界は空っぽになった」というすさまじい経験をする。それまで恋愛小説やミステリーなどを発表したが、“喪失”後はニューヨークそのものをテーマにするようになったという。もう一度、自分の町を見つめ直したいとの衝動に駆りたてられたのだろう。

 本著はマンハッタンのガイドブックとしても最適。生き字引の案内で、“通”を自任する人も数々の発見を楽しめ、さらにこの蠱惑(こわく)的な都会に取りこまれること請け合いだ。

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