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書評

この6つのおかげでヒトは進化した [著]チップ・ウォルター

[掲載]2007年10月28日
[評者]常田景子(翻訳家)

■文明の源は、太い足の親指

 腰痛や肩こりに悩まされると、直立二足歩行というのは、本当にそれほど良いものなのだろうかと思ってしまうことがある。本書はそんな思いを払拭(ふっしょく)してくれる。直立二足歩行こそが、ヒトをヒトたらしめているのだ。私たちの遠い祖先は、気候変動を生き延びるために直立二足歩行を始めた。それを可能にしたのが、他の動物にはない太くて強い足の親指だった。おかげで類人猿よりずっと効率よく、長距離を歩けるようになり、ジャングルのサバンナ化という環境の変化を乗り切ることができた。

 私たちが音声言語を操るようになったのも直立して咽頭(いんとう)が下がったからだ。人類の高度な文明はすべて太い足の親指とそれに派生して進化した六つの特徴ゆえに可能になったという。もちろん進化の研究には限界がある。ホモ・サピエンス以前の絶滅してしまったヒト科生物の生活や能力については、化石から推量する以外ない。

 だが、科学ジャーナリストである著者の、さまざまな研究者の結論に基づいた推論には説得力がある。進化は偶然の積み重ねであるとはいえ、生き延びようとする意志が、その偶然を必然に変える。ヒトの脳の標本を眺める時のような、不思議な感覚を抱かせる本だ。

    ◇

 梶山あゆみ訳

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