ここから本文エリア

RSS

現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]北田暁大> 記事

書評

もしもソクラテスに口説かれたら [著]土屋賢二

[掲載]2007年10月28日
[評者]北田暁大(東京大学准教授・社会学)

■刺激あふれる哲学の迷宮に

 「僕は君の顔も性格も好きじゃないけど、君自身を愛してる」というのは、はたして口説き文句になるだろうか。顔や学歴じゃないとはよく言うが、性格までもどうでもいいというのは珍しい。本書は、この奇妙な文句で表されるソクラテスの口説きに照準しつつ、心身問題や人格の同一性などの哲学的主題を掘り下げている。

 著者によるとソクラテスの口説き術は次のようなものだ。「人間(使うもの)と道具(使われるもの)は別のものである」「人間は身体を使うから人間と身体は別ものである」「身体を使うのは魂でもある」「人間も魂も身体を使うものだから、両者は同じものである」「ゆえに人を本当に愛する人は身体ではなく魂を愛するはずだ」「ところで他の人は君の身体を愛しているが、私だけが君の魂を愛している」「だから君自身を愛しているのは私だけだ」。何だかだまされた感じがするが、いざ反論しようとするとなかなか難しい。

 この論証をめぐり、土屋先生とゼミ生たちが徹底的に議論を交わす。専門知識は必要ない。読者は著者のユーモアを交えた言葉に導かれ、おのずと刺激あふれる哲学の迷宮へと足を踏み入れることになるだろう。

ここから広告です

広告終わり

このページのトップに戻る