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書評

廓の与右衛門 控え帳 [著]中嶋隆

[掲載]2007年11月04日
[評者]末國善己(文芸評論家)

■遊廓を舞台に“仕事人”が活躍

 中嶋隆のデビュー作は、京の島原と江戸の吉原を舞台に、廓(くるわ)のトラブルをひそかに処理する“闇の仕事人”となった大木歳三の活躍を連作形式で描いていく。

 時は元禄、犬公方こと綱吉の時代。歳三は仇討(あだう)ちを利用して完全犯罪をもくろむ犯人を追い詰めたり、遊女とその夫のもめごとを裁定したりと、何かと忙しい。

 近世文学の専門家だけに、時代考証は細やか。同じ遊廓(ゆうかく)でも吉原とは異なる島原の風俗が鮮やかに再現されている。ただ専門用語をあまり説明せず流しているところも多いので、最低限の知識がある時代小説マニアはニヤリとできるが、初心者には敷居が高いかも。

 といっても、柳生道場四天王と呼ばれた歳三が繰り広げるチャンバラはもちろん、謎解きの要素も加わっているので最後まで飽きさせない。また遊廓で起こる事件ばかりなのでエロチックな要素も満載。娯楽時代小説のあらゆる要素をバランスよく詰め込む手腕は、(月並みな表現ながら)新人離れしており、今後も期待できる。

 歳三は底辺で暮らす人々を守ろうとするが、対する武士は権力闘争に明け暮れるばかり。庶民を無視する為政者が多いのがいつの時代も変わらないと思うと、暗い気持ちになってしまう。

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