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書評

移民国としてのドイツ [著]近藤潤三

[掲載]2007年11月11日
[評者]小林良彰(慶應大学教授・政治学)

■各党の違いを越え、移民問題の解決へ

 7月の参院選の結果、衆参両院で多数を占める政党が異なるために重要な政策決定ができず、政治空白が生じていると批判する者がいる。しかし、統一以降のドイツでは、政府を支える連立与党が連邦参議院で少数派になるという逆転現象が常態化しているのにも関(かか)わらず、重要な政治決断が行われている。

 その一つが、本書のテーマである移民問題。紆余曲折(うよきょくせつ)を経ながら、時間をかけて各党がお互いの主張をすりあわせて政策合意をしていく姿が克明に映し出されている。

 まず、「ドイツは移民国ではない」という長年にわたる政府公式見解とは裏腹に、住民の約2割が外国人または本人や親などが移民という現実がある。そして、産業立国を目指すドイツにとって、大量に不足しているIT(情報技術)関連専門家など外国人技術者を招き入れたい経済界の意向と、労働者側の失業への懸念とが交錯していた。

 こうした状況の中で、ドイツ社会民主党(SPD)のシュレーダー首相(当時)が、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と調整を繰り返し、移民法を一旦(いったん)は成立させた。だが、連邦参議院(日本の参議院とは異なり、連邦各州の代表者たちで構成)の採決手続きの不備から出直しとなり、両院協議会を経て法案成立に至った。

 そして、最終的に05年に施行された移民法は、高度な専門技術や資産を持つ自営業などドイツの経済活性化に寄与する者を誘致する一方で、移住を許可する外国人について人物照会を行うなど、与野党の妥協の産物であった。それでも各党の主張の違いを乗り越えて一致にたどり着いた背景には、首相や党首たちによるリーダーシップがあった。

 その後も、所轄大臣まかせではなくCDUから出たメルケル首相自らがこの問題を担当し、政府や自治体、労使代表のほか、移民団体やメディア、宗教、学識者も加えた「統合サミット」の開催をはじめ、各党が歩み寄って移民の統合問題を解決しようとしている。翻って、わが国の政治はどこに進もうとしているのかと考えさせられる。

    ◇

 こんどう・じゅんぞう 48年生まれ。著書に『統一ドイツの政治的展開』など。

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