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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]渡辺政隆> 記事 書評 虫食む人々の暮らし [著]野中健一[掲載]2007年11月11日 ■自然を熟知してこそ、成り立つ文化 糞虫(ふんちゅう)、コオロギ、ケラ、セミ、イモムシ、タガメ、カメムシ、アリと聞いて、その共通点がおわかりだろうか。みんな昆虫という答えはあたりまえすぎる。 ではこのリストに、クロスズメバチ、イナゴ、蚕のさなぎなどを加えたらどうか。疑心暗鬼ながら、もしかしたらと思う人もいることだろう。そう、いずれもみな、世界各地で食用に供されている昆虫なのだ。それにしても糞虫(牛などの糞を丸めて食べるコガネムシ)やカメムシを食べるなんて、およそ考えられない。だって、臭(にお)いがすごそうじゃないか。 人文地理学が専門の著者は、世界各地の昆虫食を研究テーマの一つとしている。昆虫食イコール下手物(げてもの)食と速断してはいけない。伝統的に行われている昆虫食も、食文化の一部なのだ。その証拠に、昆虫食が行われている土地でも、採れる虫ならなんでも食べているわけではない。しかも、採集方法や調理方法などには、それぞれ秘伝ともいうべき流儀がある。 日本の一部で行われている蜂採りは、地域の人たちにとっては、娯楽であると同時に季節の風物詩でもある。著者によれば、クロスズメバチの巣を庭に移植して収穫時期を待つことまで行われているというからすごい。 東南アジアや南アフリカの市場では、季節になると嗜好(しこう)品として虫が売られており、産業として成り立っているという。それ以上に重要なのは、人と自然とのつながりの中で、昆虫食の文化が維持されているということだ。豊かな自然が残されており、自然を熟知していてこそ、成り立つ文化だということだろう。 そこでカメムシの食べ方だが、南アフリカでは、熱湯をかけて臭み抜きをした上で干物にし、そのまま食べる。一方ラオスでは、そのまま焼いたり炒(いた)めたりして食べる。これは、虫の種類や嗜好の違いによるものなのだろう。 では糞虫は? お目当ては糞玉の中にいる丸々と太った幼虫なのだが、これは収穫時期が肝心。絶食してさなぎになる直前じゃなきゃいけない。なんとも奥の深い話だ。 ◇ のなか・けんいち 64年生まれ。立教大教授。『民族昆虫学〜昆虫食の自然誌』。
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