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書評

ミッドナイト・クライシス [著]茅野裕城子

[掲載]2007年11月11日
[評者]巽孝之(慶應大学教授・アメリカ文学)

■素材は深刻、でも抱腹絶倒

 茅野裕城子は、当代きってのユーモア作家だ。ふつう中高年女性の妊娠・閉経を含む微妙な恋愛心理と聞けば、はなはだ深刻な素材のように響くかもしれないが、いったん彼女の手にかかると、抱腹絶倒の連作短編集が生まれ落ちる。

 表題作の主人公・銀子は40代後半。親友のルリが亡くなり、残された彼女の夫・氏家と遺品を整理しネット競売にかけていくうちに、彼と親密な関係になるも、整理が一段落したあとには、もうひとりの親友・有為のいるサンフランシスコへ旅立つ。ところが再会した有為は、これまで「子供なんか必要ない」とくりかえしてきたものの、生理の遅れを理由に「妊娠したかも」と言い出す。「暗い出口のみえないトンネルの中で迷ってしまったよう」な閉塞(へいそく)感から来る現状打破への焦り、これをアメリカでは「ミッドナイト・クライシス」と呼ぶのだと、銀子は聞きかじる。

 かくして生と死、生理と整理とが絶妙に絡み合う。と思いきや、何とこの症例名自体が「ミッドライフ・クライシス」の聞き間違いであったことが判明する。

 続く2編「ペチカ燃えろよ」「ダライ・ママ」ではさらに、ヒロインたちの人生に衝撃的なひねりが加わり、長編と見ても味わい深い。

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