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書評

晩年のスタイル [著]エドワード・W・サイード

[掲載]2007年11月18日
[評者]由里幸子(前編集委員)

■気難しく、矛盾があっても

 著者は、この評論の完成直前に亡くなった。残された論考などを友人が編集したが、素晴らしい評論となっている。

 「晩年のスタイル」は、アドルノが晩期ベートーヴェンについての評論で使った用語。自分のつくりあげた世界の破壊もおそれず、妥協を拒み、気難しく、矛盾があって破局的ともいえる「晩年性(lateness)」。それが現代音楽にもつながる境地を切り開いたという分析にサイードは刺激を受け、文学、音楽、映画、思想など幅広く同じような表現の例を探し求めている。

 lateは「遅れた、時宜をえない」との意味もある。晩年になっていなくても、そんな「時代錯誤性と変則性」を持つ芸術家もいる。グレン・グールド演奏のバッハの音楽は「時代錯誤的であるとともに自己創造性を誇る」というのだ。

 時代から取り残されたものに回帰し再発見することで、時代に先んじる創造が生まれる。そんな逆説の魅力が輝きを放つ。「見えざる最終章」はサイード自身の晩年ではないかという訳者あとがきに共感する。

 いまの時代や社会になじめない若い人々にも、「晩年性」を生きる、という新しい思考や希望を与えるのではないか。

    ◇

 大橋洋一訳

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