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書評

現代日本の小説 [著]尾崎真理子

[掲載]2007年11月25日
[評者]鴻巣友季子(翻訳家)

■電子ツールで激変する文学

 文芸記者による直接の現場取材とその実感に徹底して基づいた現代日本文学のガイドブックである。通史として読みごたえがある。著者によれば、ワープロや電子ツールのせいで、近年「作家の人格と活字の間には微妙な距離が生じ、文学は……悪意を汲(く)み出すブラックボックスと化してきた」。

 本書は、パソコン世代の村上春樹、吉本ばなな、俵万智がミリオンセラーを放ち日本近代文学が終わった1987年を分水嶺(ぶんすいれい)に、日本文学界を案内する。そうした中に、80年代には大江健三郎と中上健次が「同時代の作家たちに息をつくスペースを与え、模索する時間を作ってくれたのだ」といった、研究者らの生の証言を惜しみなくさらりと盛り込み、ベテラン記者としての凄(すご)みを感じさせる。

 やがて、ワープロは「作者以外の何者かが創作を誘導する」という事態を招き、電子ツールは極端に若い「作家」を大量に生みだした。書き手の身体とディスプレーの間に広がる虚空から、この先どういう小説が生まれてくるのか。その精神は漱石の近代的自我からはほど遠いものだと著者は締めくくる。新書サイズながら重い予言を秘めた一冊だ。

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