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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]渡辺政隆> 記事 書評 シャンパン 泡の科学 [著]ジェラール・リジェ=ベレール[掲載]2007年12月02日 ■美しい泡に魅せられ、謎を追う よく冷やしたシャンパンの栓をゆっくりと抜き、背の高いフルートグラスに静かに注ぐ。グラスの底からは細かい泡が立ち昇る。グラスを持ち上げ、口元に近づけてみよう。細かな泡が弾(はじ)け、芳香が鼻を刺激する。グラスを傾けると口の中でも泡が弾ける。スパークリングワインならではの贅沢(ぜいたく)だ。 糖がアルコール発酵すると二酸化炭素(炭酸ガス)が出る。これはどんな醸造でも同じ。シャンパンは、ビンの中でさらに2度目の発酵をさせることで炭酸ガスを封じ込める。その結果、コルク栓を開ける前のビンの中はおよそ6気圧に加圧されており、液中にも1リットル当たり12グラムほどの割合で炭酸ガスが溶けている。 シャンパンの泡は、液中に溶けていた炭酸ガスの放出である。放置しておくと、フルートグラスからはおよそ200万個の泡が立ち昇る。 よく見ると、泡はグラスの内面で形成され、上に向かってまっすぐに上昇している。しかも、少しずつ成長し、スピードを増しながら。考えてみれば不思議な現象だ。シャンパンはなぜ、美しく泡立つのか。本書は、この謎に魅せられたフランス人物理学者のシャンパン賛歌である。 炭酸ガスの泡は、グラスに付着した微細な繊維片のエアポケットで形成される。いくら磨き上げても、そうした不純物は付いているものなのだ。ちなみに、実験的にグラスを塵(ちり)一つない状態にすると、泡は生じない。 シャンパンにはビールの3倍量のガスが溶けている分、泡の発生も多い。おまけに、泡を包み込んで固めてしまう界面活性物質の量がビールよりも少ないため、シャンパンの泡は上昇しながら液中のガスを吸い上げて成長し、そのおかげで浮力が増して加速される。 表面に達した泡はそこで瞬間的にパチパチと弾け、内部の気圧を急速に減少させるため、液体が秒速数メートルで数センチの高さにまで噴出する。すべて物理の言葉で説明できるが、だからといって興ざめではない。むしろ逆に芳醇(ほうじゅん)さが増した気になる。天の恵みシャンパンに、さあ、乾杯しよう。 ◇ UNCORKED The Science of Champagne 立花峰夫訳/Gerard Liger−Belair フランスのランス大学の物理学助教授。
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