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書評

出版と社会 [著]小尾俊人

[掲載]2007年12月02日
[評者]小高賢(歌人)

■言論弾圧の内実も詳細に

 豊富な文献を通して語る大正の終わりから、戦争直前までの出版興亡史。A5判2段組み、650ページをこえる大著である。

 関東大震災後の「キング」(講談社)創刊、それと雁行(がんこう)するように改造社の山本実彦によって創案された円本。昭和の出版界(著者・編集・印刷・製本・流通・読者)はそれにより一変した。

 その円本の功罪。子どもをめぐっての興文社対アルス、文学全集をめぐっての春陽堂対改造社など多くの激烈な戦い。新聞を舞台にした凄(すさ)まじい宣伝合戦。いまの出版界を凌(しの)ぐ活気とその過激さに驚かされる。

 円本ブーム終焉(しゅうえん)前後の文庫創刊。そこにおける翻訳文化の問題。『資本論』をめぐっての岩波茂雄と河上肇との軋轢(あつれき)。現在も変わらぬが出版は人間臭いことばかりだ。

 忘れていけないのは軍による検閲・弾圧の歴史でもあったことだ。不当な事件の内実も、丹念な資料発掘に基づき詳述されている。

 平易で、おもしろく、しかも読み応えのある昭和出版史。やや高価格なのが気になるが、一度二度、酒を控えても座右に置いていい一冊ではないか。出版人にかぎらず、新聞・テレビ・広告などマスコミ業界の人たちにはとりわけ読んでもらいたい。

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