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書評

インドの衝撃 [編著]NHKスペシャル取材班

[掲載]2007年12月09日
[評者]小林良彰(慶應大学教授・政治学)

■台頭する国の実像に迫る壮大な報告

 今、インドが注目されている。毎年8%の経済成長を続け、2032年までに日本を超える経済大国になるとの予測もある。本書は、台頭するインドの実像をつかむために、経済や政治の鍵を握るエリートからスラムの庶民に至る幅広い人々に対して、インタビューを行った壮大な「インド・レポート」である。

 本書によれば、インドの成長を支えているのがIT産業であり、10億を超える巨大な人口を背景にした質の高い人材供給がある。特に、全国に七つのキャンパスを有するインド工科大学(IIT)では60倍の競争率の中から選ばれた優秀な若者が、「頭脳立国」を支えるために、全寮制で勉強に専念している。

 しかも、かつては海外に渡った卒業生の多くがインドに留(とど)まり、母国のIT産業を担っている。その根底には、長い植民地支配の歴史を背景にした強い愛国心がある。

 さらに、インドの経済成長をもたらすもう一つの鍵が、旺盛な購買意欲をもつ富裕なミドルクラスによる消費である。しかも、マンモハン・シン現首相が、貿易障壁を削減したことから、国際的な有名ブランドがインドに進出し、現在、世界8位の規模であるインドの小売市場が今後5年間は、毎年7%ずつ伸びると見込まれている。

 インドは政治面でも存在感を発揮しつつある。1998年のインドの核実験強行で、米印関係は一時最悪の事態に陥ったが、中国の台頭を懸念する米国の思惑もあり、2006年3月には協力関係構築への歴史的転換点となる米印核協力の合意を果たす。そこで注目すべきことは、インドは軍事用核施設について国際原子力機関(IAEA)の査察を受けずに米国から核技術や核燃料の提供を受けるという内容であり、米国が大幅に譲歩した格好である。

 米国との長期にわたる交渉担当者を定めて米国側担当者との個人的信頼関係を築き、時には在米インド経済界のロビイストを使って米国の強硬派政治家から譲歩を引き出す姿は見事である。今後、何かと注目されるインドを知る上での必須の本といえよう。

    ◇

天川恵美子・NHK国際放送局専任ディレクターら6人が執筆した。

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