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書評

演出家の仕事 [著]栗山民也

[掲載]2007年12月09日
[評者]杉山正樹(文芸評論家)

■明晰に語りかける演劇の現在

 「開かれた劇場」をめざして、新国立劇場の芸術監督を7年つとめた著者が、明晰(めいせき)な話し言葉で、演劇の現在について語りかける。

 出発点は、まず聞くこと。「物言う術」より聞く耳をもつこと。相手の言葉を聞き、感情を読みとって対話が始まる。そして、異質の声がぶつかり合う不調和の調和こそ、演劇の真のアンサンブルだ。

 では、戯曲はどう読めばよいのか。稽古場(けいこば)で俳優はいかに想像力を働かせればよいか。その具体例を事実に即して述べたあと、世界の演劇人との出会いとすぐれた舞台の実例をあげ、演劇とは何かを問いかける。

 その裏づけとして、演出家になるまでの自分史が語られる。金春(こんぱる)流の人間国宝櫻間(さくらま)道雄の能「伯母捨(おばすて)」を観(み)たのが舞台芸術に入るきっかけで、世阿弥の美学に傾倒したという。きわめて尖鋭(せんえい)で、かつ正統的な著者の演出の根底にふれる挿話だ。また、戦争の犠牲者だった父親と、アウシュヴィッツ強制収容所が念頭にあって、いまも沖縄でのワークショップをつづけているともいう。

 井上ひさしの近作「ロマンス」の演出日記まで添えた演劇人必見の書で、演劇を志す若者たちばかりでなく、現代劇に関心のある多くの読者に奨(すす)めたい好著。

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