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書評

鴻巣友季子 書評委員お薦め「2007年の3点」

[掲載]2007年12月23日
[評者]鴻巣友季子(翻訳家)

 (1)円朝芝居噺 夫婦幽霊(辻原登著、講談社・1785円)

写真鴻巣友季子さんのこの1年 来年は子育てエッセー『孕むことば』とワイン文学評論『カーヴの隅の本棚』の連載が単行本に。そしてヴァージニア・ウルフ『灯台へ』の新訳!

 (2)わたしたちに許された特別な時間の終わり(岡田利規著、新潮社・1365円)

 (3)白暗淵(しろわだ)(古井由吉著、講談社・2310円)

    ◇

 (1)近代日本文学なるものの出発点からの道のりをこれほど華麗に痛快に奥深く「翻訳」した現代日本文学があるだろうか。小説論を擁した小説ながら、メタフィクションなんていう語が裸足で逃げだすほどの面白さ! セオリーを語らず、ロマンスを語る。

 本書を読まずに年を越してはいけません。

 (2)同名戯曲の小説版。芝居のほうは、字幕付きの海外公演を重ねて好評だという。どんなに「狭い」世界のことを書いても、他言語の壁を突破できる言葉のしたたかさがこの小説にもある。一見ゆるいネットのお喋(しゃべ)りのような言葉を連ねながら、それとは対極にある強度と完成度。

 (3)この境を越えていいのかという戦(おのの)きをつねに感じながら、先の暗淵へと曳(ひ)かれていってしまう。ポルトガルのノーベル賞作家サラマーゴの『白の闇』を想(おも)いつつ読んでいる。

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