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書評

酒井啓子 書評委員お薦め「2007年の3点」

[掲載]2007年12月23日
[評者]酒井啓子(東京外国語大学教授・中東現代政治)

 (1)イラク占領―戦争と抵抗(パトリック・コバーン著、大沼安史訳、緑風出版・2940円)

写真酒井啓子さんのこの1年 教育職について3年目。中東からの留学生に中東を教えるという、こちらが学生になった気分を毎日味わう。心地よい緊張感。

 (2)テロル(ヤスミナ・カドラ著、藤本優子訳、ハヤカワepiブック・プラネット・1890円)

 (3)ナショナリズムの由来(大澤真幸著、講談社・5000円)

    ◇

 今年は中東本がイラン、イラクに集中した。前者は在外イラン人の筆になるものを含め、欧米社会のイラン核開発批判という世相を反映したものが多い。一方イラク関係は、イラク戦争の失敗を描いた良書が続いた。なかでも(1)は、(固有名詞の訳に難があるが)最高のジャーナリストによるビビッドな戦後ルポ。

 中東やイスラームに関する翻訳小説が増えたのも、うれしい限りだ。パレスチナやアフガニスタンを舞台にしたものが多いが、なかでも(2)は、自爆を扱った考えさせられる小説。非欧米作家の翻訳出版が、ブームに終わらないでほしい。アラビア語など原語からの翻訳が進めば、もっと多様な小説が発掘できるはずだ。

 (3)は、待ってました、という感じの、大澤節の集大成。普遍主義と特殊主義の同時進行というナショナリズムの現代性が、見事に解明される。

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