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書評

野口武彦 書評委員お薦め「2007年の3点」

[掲載]2007年12月23日
[評者]野口武彦(文芸評論家)

 (1)サムライとヤクザ―「男」の来た道(氏家幹人著、ちくま新書・819円)

写真野口武彦さんのこの1年 3月に『幕末バトル・ロワイヤル』(新潮新書)を刊行。10月、「群像」に連載した「幕末不戦派軍記」を完結。11月、『忠臣蔵』を文庫化(ちくま学芸文庫)

 (2)勘定奉行荻原重秀の生涯(村井淳志著、集英社新書・735円)

 (3)カラマーゾフの兄弟(全5巻)(ドストエフスキー著、亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫・660〜1080円)

    ◇

 (1)武士道とエロスが切り結ぶ「男道」の生態例を妖(あや)しく描く。珍しい史料を発掘し、目のウロコが何枚あっても足りない。江戸時代三百年のうちに武士と駕籠舁(かごか)きは肉体的な力関係が逆転していた。政治家がなぜヤクザに弱いかの心理的古層が鮮やかに示される。

 (2)うっかりいい本を見落としていた。元禄貨幣改鋳の悪役として扱われてきた重秀の《名誉回復》を試みる力作である。断片的な史料を博捜して復原する史料調査が行き届いている。重秀は政敵の新井白石にいじめ殺されたと主張する結末がパセティックだ。

 (3)初めて読んだのが高校生の時だったから、五十三年ぶりの再読。いちばん親愛感を覚える作中人物が好色な道化役の父フョードルになっているのに驚く。新訳の語感がこの古典の現代性を生き返らせる。「暴走老人」化している年齢にも面白く読めよう。

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