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書評

日本人にとって英語とは何か [著]大谷泰照

[掲載]2008年01月06日
[評者]奈良岡聰智(京都大学准教授)

■英語礼賛と排斥を反復しつつ

 一昨年海外に出かけた日本人は約1800万人。史上2番目に多い記録だという。国際化に伴い、交換留学、駅前留学が盛んに行われ、第2公用語化が目指されるなど、英語教育はますます熱を帯びている。

 しかし、果たして日本人の英語力は向上しているのだろうか。国際感覚豊かな「国際人」が育っているのだろうか。筆者は、海外旅行や英語の学習は、国際理解のためには意外に無力で、時に偏見や誤解を増幅する危険すらあると説き、安易な異文化理解の「幻想」に警鐘を鳴らす。

 興味深いのは、日本人の英語熱が周期的なサイクルを繰り返してきたという指摘である。終戦後、日本人は「鬼畜米英」から手のひらを返して「一億総英語会話」に急変したが、高度成長の達成と共に熱は薄れ、英語教育の時間は一貫して減少し続けた。しかし、バブルの崩壊という「第二の敗戦」以降、英語への異常なまでの接近が再開し、今なおそのブームの中にあるという。英語の礼賛と排斥が繰り返され、人々が踊らされる様が、何とも哀(かな)しい。

 言語・文化の多様性と相対性、真の異文化理解のあり方について考えさせられる好著である。

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