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書評

評伝 観世榮夫 [著]船木拓生

[掲載]2008年01月13日
[評者]小高賢(歌人)

■異端児の情熱の根源を分厚く

 「能楽界の異端児」。観世栄夫に使われたキャッチフレーズである。名門観世銕之丞家に生まれ、上には寿夫、下には静夫というライバルでもあった兄弟がいた。しかし、彼は能楽だけに留(とど)まっていられなかった。

 観世にもかかわらず喜多流の芸養子になることから始まり、他ジャンルへ。役者として、演出家として、あるいは演劇運動家として、狂言、歌舞伎、新劇、映画、オペラ……。次々と分野を越境するエネルギーに誰しもが驚愕(きょうがく)する。もちろんそこには戦後のもつ熱っぽさが後押ししていた。しかし、それだけでは足跡を解くことはできない。

 評伝といいながら、本書が能楽を縦糸に、それ以外の演劇(狂言・歌舞伎・新劇など)を横糸に、ページをたっぷりと明治以降の日本演劇史に割く意図もそこに理由があるのだろう。

 家元制度や流派、古典摂取と修業の関係、あるいは権力との対峙(たいじ)、さまざまな矛盾をかかえた近現代の能。さらに西洋摂取に苦闘する日本の演劇。網の目のように絡みあった背景抜きに、あふれるばかりの栄夫の舞台への欲望と多彩な試行は理解しにくいからだ。

 晩年の能への復帰まで、情熱の根源が分厚く描かれた大作。

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