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書評

西南戦争 西郷隆盛と日本最後の内戦 [著]小川原正道

[掲載]2008年01月20日
[評者]奈良岡聰智(京都大学准教授)

■西郷シンボル化の軌跡を追う

 近代日本最大、そして日本史上最後の内戦だった西南戦争。本書は、この戦争が「不平士族の反乱」という一言では割り切れない多様な性格を持っていたことに焦点を当てている。

 例えば、挙兵の動機は、明治新政府の専制、開化路線に対する反発だったが、その政府批判は、欧米の革命思想から強い影響を受けており、福沢諭吉のように、西郷隆盛の「抵抗の精神」を弁護する啓蒙(けいもう)思想家も存在した。

 また、自らの意思で西郷軍、新政府軍に加わった者が全国にいた半面、薩摩にはいずれにも与(くみ)しない旧士族が多数おり、彼らの帰趨(きすう)には旧藩時代からの身分差別も影を落としていた。

 多様であるが故に、政府に「尋問」するという矮小(わいしょう)な決起目的しか掲げ得なかった西郷軍。それを辛うじてまとめていたのが西郷という存在そのものであった。著者は、西郷が真情を語ることなく決起のシンボルとなり、やがて神秘化され、様々な夢が仮託されていった軌跡を追う。他方、戦争で示された政府への抵抗のエネルギーは、自由民権運動に転化していったと評価されている。

 西南戦争130周年となる年に、その全体像をバランス良く描き出した良き概説書が誕生した。

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