|
ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]小林良彰> 記事 書評 日本の地方政治 二元代表制政府の政策選択 [著]曽我謙悟・待鳥聡史[掲載]2008年01月20日 ■首長と議会、二つの民意の機能を分析 第1次地方分権や三位一体改革の結果、地方自治体の財政状況に大きな格差が生じるようになり、あらためて知事や地方議会の重要性と責任が問われるようになってきた。かつてのような「誰が知事をやっても同じ」といわれた時代は終焉(しゅうえん)したのである。 こうした地方自治体について、従来は「中央―地方関係」(国と自治体の関係)から分析するか、自治体官僚の行動に注目して分析することが多く、「二元代表制」(住民から選ばれた自治体の首長と議員が住民の民意を各々(おのおの)、代表する仕組み)が機能しているのかどうかという視点から分析することは稀(まれ)であった。 これに対して、本書は、60年代以降を、15年ごとに、(1)革新自治体隆盛期、(2)保守回帰期、(3)無党派知事期の3期に分け、各期ごとに、各都道府県の知事の党派性や地方議会における各党派の議席率が政策選好にどのような影響をもたらしてきたのかを分析したものである。 その結果、まず(1)期では、革新系知事が福祉重視を推進しようとしたのに対して、党派を問わず地方議会は開発重視を主張した。そして(2)期では、知事が財政健全化を進めようとしたのに対して、議会は歳出削減に消極的であった。また(3)期では、厳しい財政状況の中で歳出を抑制せざるをえず、党派による政策選好の対立が明確になったことが明らかにされている。 また、地方交付税が常に財政規律を失わせることに直結するわけではないなど、興味深い知見も得られている。 これらの分析を通じて、著者はこれまであまり顧みてこなかった「日本の地方政治」に解明のメスを入れようとしており、その意欲は高く評価したい。また、きちんとした理論的仮説に基づいて客観的なデータ分析を行うことで、既存の学問に対する理論的貢献を行おうとする試みは、他の研究者の範となるものである。自治体財政については地域特性など他の要因も含めて分析する必要があるなどの本書で残された幾つかの課題を含めて、著者や彼らに続く世代が今後、分析を積み重ねていくことを期待したい。 ◇ そが・けんご 大阪大学大学院准教授。まちどり・さとし 京都大学大学院教授。
ここから広告です 広告終わり 書評 バックナンバー
|
ここから広告です 広告終わり 売れ筋ランキングコラム
|