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書評

グローバル市民社会論―戦争へのひとつの回答 [著]メアリー・カルドー

[掲載]2008年01月27日
[評者]小林良彰(慶應大学教授・政治学)

■権利保護のネットワーク構築を提起

 グローバリゼーションの流れの中で、市民社会も大きな変容を遂げている。

 かつては各々(おのおの)の国民国家の中で自己完結していた市民社会が、国家の枠を超えて相互に連結しつつあるのだ。特に、1980年代から90年代にかけて、ソ連・東欧の共産主義体制に対抗する理念や活動が東欧や中欧で活性化した。西欧の平和運動とも交流をもち、ベルリンの壁崩壊に繋(つな)がった。また、通信や交流の発展は、西洋と非西洋の区分崩壊を進め、ラテンアメリカなどの開発途上国の軍事的権威主義体制に対しても、同様のグローバルなネットワークが形成されていった。

 こうした状況に対し、メアリー・カルドーはグローバルな「市民社会」の行為主体に注目する。80年代90年代には専門家を中心とする国際NGOなどによる国家を超えた市民ネットワーク(例えば、環境保護やジェンダーなどに関する国際的なネットワーク)が活発であったが、90年代・2000年代においては労働者や農民、学生を巻き込んだ「新しい」民族主義運動やグローバリゼーションの犠牲者の連帯による反資本主義運動にまで広がりつつあると述べる。

 これら一連の市民社会については、従来の「国家VS.国家」という戦争から、国家の枠組みを超えた宗教などを背景とする戦争や、「非国家」によるテロといった新しい形態の戦争をもたらす契機となっている、というネガティブな見方もできる。

 しかし、カルドーは、権威主義や軍事主義と闘うためには、権利の保護についてのグローバルなネットワークや制度的保障というインフラを構築することも重要であると訴える。そして、国際人道法の強化や国際法の公平な適用などを通じた安全保障を獲得するために、グローバルな市民社会は必要であると彼女は考える。その背景には、9・11以降の米国の単独主義に対する彼女の批判があることは言うまでもない。

 冷戦後も続くグローバルな紛争や軍事的衝突、そして環境や人権などの問題解決を考えるためにも、ぜひとも読んでもらいたい話題作である。

    ◇

 山本武彦ほか訳/M.Kaldor 46年生まれ。ロンドン政治経済学院グローバル・ガバナンス研究センター所長・教授。

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