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書評

ミトコンドリアが進化を決めた [著]ニック・レーン

[掲載]2008年02月03日
[評者]渡辺政隆(サイエンスライター)

■生命の深淵をのぞき見る思い

 本書の原題は『パワー、セックス、自殺』。扇情的なタイトルだが、これこそが、われわれの体を構成する細胞の中にすみついているエイリアン、ミトコンドリアの役割を説明するキーワードなのだ。細胞の中にある小さな器官のような存在だが、そのいちばんの仕事はエネルギーの生産。すなわちパワーの源なのだ。

 そもそもなんでこんな器官が細胞の中にあるのか。それは、数十億年前に原始的な細菌が別の細菌の中にすみついたからである。ミトコンドリアは、往時の遺産として自前のDNAまでもっている。

 細菌は単細胞生物。その機能には限界がある。しかし細菌どうし共生することでわれわれ多細胞生物が進化する道が開かれた。

 ところがそこから、細胞内の2種類のDNAをめぐる攻防が始まった。その結果生まれたのが雄と雌という二つのセックス(性)であり、損傷した細胞を除去するためのアポトーシスという自殺の仕組みだった。

 それらすべてにミトコンドリアが絡んでいるという刺激的な仮説を交えながらミトコンドリア研究の最前線を熱く語り、生命のダイナミズムとその深淵(しんえん)をのぞき見るスリルを味わわせてくれる。

    ◇

 斉藤隆央訳

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