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書評

敗戦の記憶―身体・文化・物語 1945―1970 [著]五十嵐惠邦

[掲載]2008年02月10日
[評者]巽孝之(慶應大学教授・アメリカ文学)

■編み出された「物語」と戦後

 著者は60年大阪生まれ、現在は米国バンダービルト大学歴史学部準教授。本書は2000年にプリンストン大学より出版された著書の邦訳。

 敗戦研究といえば、わが国でも加藤典洋らの仕事があるが、著者もまた、原爆投下と天皇制存続という不可能な取り合わせがいかに連動するに至ったのかを、膨大な史料をもとに再検討する。たしかに、原爆投下が日本にとって明らかな悪でも、アメリカにとっては平和をもたらす手段だったという国民的総意のちがいは、まず埋めがたい。にもかかわらず、戦後の歴史へ一定の連続性を与えようと、日米は力を合わせ、天皇の戦争責任を問わぬまま日本を民主国家へ改造するため、「天皇の聖断による終戦」という、誰にもわかりやすい「物語」を編み出した。その影響で、あるいはそれを批判しようと、戦後日本の文学や文化一般が物語られるようになったことを証明するのに、丸山真男や三島由紀夫、大江健三郎からゴジラまでが射程に入る。

 とりわけ、体育会系の著者らしいスポーツ論のうちでも、アメリカ製ゲームを再利用したプロレスラー力道山の必殺技「空手チョップ」をめぐる分析の切れ味は凄(すさ)まじく、誰もがノックアウトされることだろう。

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