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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]赤澤史朗> 記事 書評 昭和十年代の陸軍と政治―軍部大臣現役武官制の虚像と実像 [著]筒井清忠[掲載]2008年02月10日 ■陸軍の政治的武器だったのか これまでの通説では、昭和10年代に陸軍が横車を押すための政治的武器になったのが、二・二六事件の後に復活した軍部大臣現役武官制であったという。もし軍部が首相や首相候補者と対立したら、軍部は陸軍大臣を辞任させ後任を推薦しないことで、内閣を辞職に追い込み組閣を阻止できたというのである。 これに対し本書は、この制度が倒閣の決定的武器ではなかったことを論証したものだ。内閣の死命を制したのは、陸軍幕僚層とそれ以外の勢力との間の全体的な力関係であって、この制度ではないという。本書は、首相と陸軍大臣の椅子(いす)をめぐる権力抗争を、裏切りや弁解に満ちたドラマとして描きながら、知られた史実を再整理して通説批判の意外な結論を導き出している。 著者は通説を、陸軍の政治指導権の強さを実際以上に評価させる説明と見ているようだ。それは宮中やマスメディアの役割を、過小評価させるものだという。確かに宮中を、軍部に抵抗する穏健派と位置づけた東京裁判の検察側の論理は、軍部大臣現役武官制の役割を重視したものだった。昭和史の常識とされていた制度を疑うことを通して、未解決の課題があることに気付かせてくれる。
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