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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]小林良彰> 記事 書評 ポスト戦後政治への対抗軸 [著]山口二郎[掲載]2008年02月10日 ■透明なルールで「平等」の理念を再び 小泉政権以降、国内の政策では平等の崩壊が進む。著者は、英国の政治学者クラウチが命名したこのような「ポスト・デモクラシー」という現象のなかで、なぜ西欧左派が政権を奪取でき、日本では政権交代が起きなかったのかという問いに答えようとする。 19世紀から20世紀初頭の一定の要件を満たした少数者による議会政治という「プレ・デモクラシー」の時代を経て、20世紀後半には社会福祉や社会保障による平等化が進み、デモクラシーの最盛期を迎えた。 しかし、90年代以降、経済のグローバル化による競争激化で終身雇用や企業年金などの企業内福祉が見直され、政府の財政悪化もあって社会全体が小さな政府へ向かった。その結果、平等よりも自己責任という名の「リスクの個人化」が横行している。 英国労働党に代表される西欧左派は、公共事業で雇用を作り出す従来の方針を転換し、教育政策や労働政策で個人の能力を強化する方針に移行した。また、右派以上に経済競争や成長を重視し、英国保守党のような右派から政権を奪い返した。 一方、日本では自民党が支持率を減らし続ける中でも、社会党が旧来型政策から転換できなかったと批判する。自民党主流派も社会党も「大きな再配分政治」という点では共通し、共にグローバル化や財政悪化という時代状況への対応が遅れたことになる。 このため、市場原理を重視する新自由主義を指向した小泉改革だけが、旧来政治に対する唯一の対抗軸となり、一世を風靡(ふうび)した。 これに対し、著者は新自由主義の結果、セーフティーネットや安定した老後設計が崩壊すると共に災害や環境破壊へのリスクが増え、民のモラルハザードも起きていると指摘する。そして、今こそ明示された財源と透明なルールを伴う再配分や公共セクターの信頼回復を目指し、「平等」の理念に立脚した対抗軸を創(つく)るべきであると訴える。 小泉改革から距離を置きつつある福田自民党や小沢民主党の本質を考える枠組みを与える洞察力溢(あふ)れる書である。 ◇ やまぐち・じろう 58年生まれ。北海道大学教授。著書『大蔵官僚支配の終焉』など。
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