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書評

メフェナーボウンのつどう道 [著]古処誠二

[掲載]2008年02月17日
[評者]末國善己(文芸評論家)

■撤退の中、悩んだ看護婦たち

 太平洋戦争を題材にしながらも、時代を超えた普遍的なドラマを紡いできた著者が最新作の舞台に選んだのは、大戦末期のビルマ(現ミャンマー)。英印軍の進攻でラングーンの兵站(へいたん)病院からの撤退を命じられた日赤看護婦が、徒歩で約350キロ先のモールメンを目指すことになる。

 タイトルのメフェナーボウンは仮面のこと。主人公の静子は、ビルマ人看護婦、衛生下士官、負傷兵、慰安婦たちと行動を共にするが、誰もが仮面を被(かぶ)っている。これはタテマエを重んじる日本人の暗喩(あんゆ)なのだが、次第に肝心の仮面は剥(は)がれ本音がのぞいてくる。

 死が隣り合わせの極限状況では、看護婦の博愛主義など自己満足に過ぎず、傷病兵を助けることは本人に負い目を感じさせるだけ。日本軍はビルマを英国支配から解放するも独立は認めず、一方で親日だったはずのビルマ人は、敗色が濃くなると日本人に高値で食料を売り、平然とイギリスに内通する。

 状況によって善と悪は入れ替わるし、属する組織によって常識も変わる。その中で人間は、客観的な真理を語れるのか? この問題を追及した本書は、歴史認識から国際情勢まで、物事を冷静に判断することの大切さを示しているのである。

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