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書評

魅せられた身体―旅する音楽家コリン・マクフィーとその時代 [著]小沼純一

[掲載]2008年02月17日
[評者]常田景子(翻訳家)

■音楽に国境は本当にないのか

 ガムラン音楽に魅せられ、1930年代にバリ島に渡ったカナダ出身の音楽家コリン・マクフィーの軌跡を追いつつ、音楽における越境について深く広く考察した書である。

 マクフィーが初めてガムランを聴いたのは、音質の良くないレコードだった。それでも「聴けば聴くほどその魅力にとりつかれた」マクフィーはバリにおもむき、人生が大きく変わってしまった。マクフィーはバリに滞在してガムランを研究し、その結実として後に3管編成のオーケストラと2台のピアノのための作品「タブー=タブハン」を作曲したほか、バリ島滞在記『熱帯の旅人』などを残している。

 本書は1889年のパリ万国博覧会でジャワのガムランに出合ったドビュッシーや、1931年のパリ植民地博覧会でバリ島の演劇に衝撃を受け、独自の演劇論を展開したアントナン・アルトーをはじめ、異文化に触れることによって変容を遂げたさまざまな芸術家についても追跡している。

 音楽というものに本当に国境はないのか? 音楽の越境は、考えられているほど単純なものなのだろうか? 音楽だけでなく、あらゆる分野の国際交流について考えさせられる本である。

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