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書評

狼たちの月 [著]フリオ・リャマサーレス

[掲載]2008年02月24日
[評者]常田景子(翻訳家)

■極限状況で敗走する闘士たち

 物語は、フランコが軍事蜂起してスペイン内戦が始まった年の翌年、1937年に始まる。時代背景についての前書きで、主人公たちが敗走する人民戦線派の闘士であることが分かる。

 闘士とはいえ、もとはごく普通の労働者たちである。彼らは狼(おおかみ)のように狩られ、信頼できるごくわずかな人々に支えられ、闇に潜み、「死者たちの太陽」と呼ばれる月を仰いで逃亡生活を続ける。39年、フランコ軍がマドリードを占領し内戦の終結を宣言したが、主人公たちは、相変わらず潜伏を続けなければならない。捕らえられれば、拷問の果てに殺されて道端に捨てられるしかないからだ。生き延びるために犯罪にも手を染め、可能な時には報復さえする。そして仲間が1人また1人と死んでいく。

 作者は55年生まれというから、フランコが死んだ年に成人したことになる。内戦時代を生き抜いたわけではないが、それだけに、内戦時代の記憶を風化させたくないという思いが、この作品を書かせたのだろう。今も山の中に永遠に眠っている人々がいると著者は書いている。凍(い)てつき澄み切った空気のような文章が、極限状況で必死に生き延びようとする人間の命を鮮やかに浮かび上がらせる。

    ◇

 木村榮一訳

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