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書評

てつがくこじんじゅぎょう [著]鷲田清一×永江朗

[掲載]2008年03月02日
[評者]四ノ原恒憲(編集委員)

■難解な殺し文句も溶け出す

 ひらがな書きの書名を見て、子どものころ、「てつがく」を「鉄学」と書く、と信じていたことを思い出した。とても難しそうな学問なので、硬い「鉄」を連想したのだろう。

 いや、確かに難しく、長じても敬して遠ざけてきた。でも、哲学科卒ながら、いわば素人であるフリーライターの永江氏が、哲学の専門家である鷲田教授から受けた個人授業を、問答形式で記述した入門書風のこの本を読むと、少々感じが変わってくる。

 題材は、古今23人の大哲学者が残した殺し文句的な短い文章。どれも一読超難解。例えば「運動における私の決意と私の身体との関係は、魔術的な関係なのである」(メルロポンティ)。ようわからん。でも、これが、人は車を運転する時、なぜ、一瞬にしてこの細い道を通れるかどうかがわかるか、ということだ、と教えられる。何やら興味がわいてきませんか。

 自分探しの苦しさ、すべてが自己責任ですむのか……。常に、現代の身近な事象を例に出しながら進む2人の「ぼけ」と「突っ込み」に満ちた対話は、軽妙にして深遠。「鉄」がゆっくり溶け出し、知的な好奇心を甘くくすぐりはじめる時の快感はなかなかです。

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