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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]その他> 記事 書評 永遠の故郷―夜 [著]吉田秀和[掲載]2008年03月02日 ■歌曲に織り込む深い味わい 1913年生まれ。いまも現役の吉田秀和の連載エッセーを一冊にしたものである。R・シュトラウス、ヴォルフ、ブラームスなどの歌曲を解説、曲に劣らず大事な詩を鑑賞しながら、そこにヨーロッパの自然や色彩、あるいは旅の思い出や人々の回想をタピストリーのように丁寧に織りこんでゆく。 あとがきによれば、今回は「夜」の巻で、これから「薄明」「昼」「黄昏(たそがれ)」と、さらにまとめて全4巻にしたいという。その姿勢だけでも感動してしまうが、一篇(ぺん)一篇の醸しだす味わいがまた格別である。 引用されている楽譜などろくに読めない私でも、とても豊かな気持ちになるのは、おそらくその文章の力なのだろう。バイロイトでの丸山真男、大岡昇平、あるいはヴォルフをうたうフィッシャー=ディースカウ、パリの小さい宿のあるじ夫妻……。一筆書きのように点描されるスケッチも印象的だ。 詳しく紹介できないのが残念だが、《メリー・ウイドゥのワルツ》にまつわる甘くて切ない吉田少年の失恋なども、ぜひ読んでほしい掌編である。 本書は読み急いではいけない。立ち止まり、こくや匂(にお)いを感じ、また歩みだすという本だからである。 ここから広告です 広告終わり 書評 バックナンバー
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