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書評

キュア [著]田口ランディ

[掲載]2008年03月09日
[評者]香山リカ(精神科医、帝塚山学院大学教授)

■がんになった外科医の苦悩

 男性では2人に1人がかかる病気、がん。今や国民病とまで言われるが、告知や闘病にどう向き合うかはあくまでそのひと個人の問題だと、本書は訴える。

 優秀かつ特殊な直観力を持つ外科医の主人公は、自分が進行した肝臓がんにかかっていることを知る。相手が患者なら当然、手術を勧めるところだが、どうしても現代医療のシステムに身体を預ける気になれない彼の前に、不思議な人たちが次々に現れる。「オーラが見える」という看護師、「ゼロ磁場」が細胞に与える影響を研究する旧友、瞑想(めいそう)と覚醒(かくせい)でがんから生還したというカリスマ、そっと寄り添ってくるリストカット少女。しかし、どの人にもがんを消し去る決定的な能力があるわけではなく、主人公は彼らのあいだをさまよいながら、「死とは誰のものか」「医療とは何なのか」と考え続ける。

 結局、外科医がたどり着いた地点が本当の救済であったのかどうかは、議論が分かれるところだ。ただ、息が苦しくなるような逡巡(しゅんじゅん)の果て、物語の終わりにおざなりな「奇跡」が用意されていないのは、著者の誠実さの証しと見るべきだろう。重いテーマだが、読みものとしての面白みも十分。若い世代にも読んでほしい。

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