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書評

白球と宿命 [監修]矢崎良一

[掲載]2008年03月16日
[評者]佐山一郎(作家)

■甲子園の後にもう一つの物語

 副題に「甲子園から生まれた6つの物語」とあるように春・夏の高校野球は物語の宝庫。

 昨夏の優勝校、佐賀北高校野球部の逸話「奇跡は起こせる!」(文・樫本ゆき)のプロローグから、77年夏の決勝で相見(あいまみ)えた選手同士のその後の交流を描く最終章「バーディーパットをもう一度」(文・高川武将)までのいずれもが味わい深い。

 準優勝投手、東邦高校の“バンビ”こと坂本佳一は、プロゴルファーになった優勝校東洋大姫路の左翼手、平石武則のキャディーを00年「中日クラウンズ」で志願。その高校野球アイドル坂本も今は商社の室長。時の流れの豊かさを感じさせる佳作だ。

 異色作は「あの夏を越える夏を探して」(文・中村計)。4000校を超える高校球界の頂点を極めたワンダーボーイたちはエレベーター式に大学野球部に入る。だが斎藤佑樹以外のレギュラー組は名状しがたい空虚に包囲されていた。青春、いかに生きるべきかの観点と情感が溶け合い、早実ナインの後日譚(たん)の作品化に成功している。

 卑近に流れがちなスポーツ報道も意欲さえあれば文学作品に結晶する。被取材者の協力姿勢も清々(すがすが)しく、爽快(そうかい)な読後感に一役買っている。

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