[掲載]2008年3月23日
■錯綜する尖端と伝統に可能性
「阪神間モダニズム」という概念がある。大正から昭和初期、阪神間で先駆的な郊外生活が実践された。甲子園野球や宝塚少女歌劇などの大衆娯楽も発達、関東大震災後に東京から逃避した作家や画家の活躍もあって、東京とは異なるモダニズム文化が展開された。
本書はそれに京都の事例を加えて「関西モダニズム」を提唱する論集である。文芸、美術、建築、技術史、新劇運動など、収載された各論は多岐にわたる。ただ、「関西モダニズム」という新しい枠組みをめぐる挑戦的な議論や、領域を横断する独自の仮説は乏しい。
そのなかで鈴木貞美の論文は意欲的だ。専門ごとに定義や用法が異なるモダニズムの概念を見事に整理し、前時代の「近代化」を否定することで「近代化」を推し進めようとする「近代主義」、ひいては「近代化主義」を批判する。大いに共感を覚える。
鈴木は1930年代に日本文化の神髄とされた「わび・さび」「幽玄」など中世の美意識が、高度経済成長期に復活した事実などを例示、同時進行した「モダニズム」と「伝統の再評価」の動きに注目する。時代の尖端(せんたん)と伝統とが錯綜(さくそう)する状況のなかに、関西モダニズム研究の可能性があると確信しているようだ。
出版社:思文閣出版 価格:¥ 8,925
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